行政書士試験のメイン科目である行政法と憲法。この2科目で特に重要なのが、判例知識です。判例そのものを問う出題もあり、押さえることで得点につながります。
判例学習の理想的な書籍と言えば、判例百選があります。もっとも行政法の場合だと、上下2冊あわせて200以上の判例を収録しており、初学者の受験生の方には消化不良になる恐れがあります。
そこで行政書士試験におすすめの判例集をまとめてみました。
(画像はイメージです。)
初学者向け
大手スクールを中心に出版されている「行政書士試験向け判例集」。コンパクトな内容に仕上がっている書籍が多いです。
【TAC出版】みんなが欲しかった! 行政書士の判例集
TAC出版による判例集です。旧版の「行政書士一発合格シリーズ」から名前を変え、パワーアップしました。
内容としては、「判例」「図解」「練習問題(確認問題)」がワンセットになっており、行政書士試験に特化しています。またTAC行政書士講座による編集もうれしい点です。
- TAC行政書士講座が試験に出そうな重要判例を厳選!
- 事案・争点・結論・判旨・関連判例チェック・練習問題がワンセット
- 複雑な事案には図解を用意
学習初期から直前期まで使える内容です
【伊藤塾】1分マスター行政書士 重要用語・重要判例編
判例百選をベースとして、なおかつ試験対策の面から必要な重要判例だけを厳選したのが、伊藤塾行政書士講座の「1分マスター行政書士(重要用語・重要判例編)」です。
法律資格に強い伊藤塾による制作なので、受験生の方も安心して使用することができます。
さらに一部が問題形式になっているので、インプットとアウトプットを並行して学習することができ、この点からも行政書士試験の短期合格に役立つと言えるでしょう。重要判例の知識マスターならば本書以外にない、そう断言できる1冊です。
また伊藤塾行政書士講座では、「書籍特設ページ」を用意しています。この特設ページでは、「平成18年から25年度までの行政書士試験の問題および解説」の無料ダウンロードサービスなど、魅力的なコンテンツを用意しています。
▲伊藤塾行政書士講座、特設ページ(画像は公式サイトから)
【内容情報】(出版社より)
重要度表記で試験直前に便利。赤シートで重要用語が消せ、覚えるのに便利。特に押さえておくべき事項を「ポイント!」で確認。重要語句は表を用いて解説。行政書士試験に頻出の200項目がカード形式で覚えられる!引用「楽天ブックス」
【西村和彦先生】今年こそ行政書士! 試験にデル判例
行政書士試験や司法書士試験など、法律系資格の書籍を数多く執筆されている西村和彦先生の判例集「今年こそ行政書士! 試験にデル判例」です。
- 収録判例数は1000件以上とボリューム満点
憲法、民法、行政法、商法・会社法など1,000件以上の収録。これだけあれば十分でしょう。
- 試験の目的に合わせて、判例を3つに分類
重要判例と言っても、「関連判例まで理解するもの」「結論の暗記だけで十分」など濃淡があります。
そこで本書では、「基本判例」「関連判例」「チェック判例(結論だけでいい)」の3つに分類。メリハリのある判例学習が可能です。
- 図解や質問形式などの工夫
判例学習は判例を読み込む作業ですが、初学者にはハードルが高いもの。
そこで本書では、「図解」や「質問形式での説明」、「判例のPOINT」などの解説といった工夫がされています。
- 出題可能性が高い「判例ベストテン」を掲載!
出題予想の参考にしたい「判例ベストテン」を掲載。もちろん民法改正など最新の情報も反映しています。
判例漫画
【辰巳】法律入門 判例まんが本
判例百選をベースに重要判例を厳選。「4コマ漫画」+「判旨」+「コメント(解説)」で、理解を目指します。
何より喜怒哀楽のある「漫画」なので、楽しみながら学習できます。
行政書士試験向けとして、行政法・憲法・民法・会社法などがあります
なお、行政書士試験向けの漫画は想像以上に充実しています。詳しくはこちらの記事をご参照ください。
学習経験者・中上級者向け
ここからは学習経験者や中上級者向けの判例集をまとめます。
完全整理択一六法
司法試験予備試験向けの逐条式(条文別)要点集です。予備試験向けですが、最近の行政書士試験のレベルは近いものがあります。その点でも、決して難しくないはずです。
この「完全整理択一六法」ですが、「条文」「判例」「制度説明(概要)」などがセットになっています。何よりLEC東京リーガルマインドによる編集。安心です。
【野口貴公美先生(試験委員)】行政法判例50! (START UP)
行政書士試験の出題者(試験委員という)でもある野口貴公美・中央大学教授らによる判例集「行政法判例50! (START UP)」です。
収録判例数を50と絞り込み、判例の自体の検討はもちろん、「判例の読み方(読み解きポイント)」など判例への接し方も勉強になるでしょう。
「広く浅く」というより「狭く深く」というイメージです。
判例百選
やはり最終的にフォローしておきたい判例集が「判例百選」です。
もっとも収録数が多く、またレベルが高いため、判例百選分析講座などを利用するのがおすすめです。
特に最初から気合を入れてスタートすると、挫折する可能性が高いです。授業などで出てきた判例と並行して読むなど、少しづつ始めるといいでしょう。
【まとめ】判例は「何を」「どこまで」学習するか?
ここまで行政書士試験向けの判例集についてみてきました。行政書士試験は法律系の入門資格ですが、試験内容は本格的です。そこで次の視点が大切です。
「何を学習するか?」
行政書士試験の判例の出題例をみると、憲法や行政法共に判例百選に掲載されている判例が中心になっていますが、それでは判例百選を学習すれば良いかというとそうではありません。
将来的に司法試験の受験を目指すならば別ですが、行政書士試験だけ、それも短期間での合格を目指すならば、判例百選に収録された判例を全て学習するのは不可能です。
「どこまで学習するか?」
判例百選は、事件の概要、判決の要旨、解説(学説など)の3つから構成されていますが、行政書士試験対策で必要なのは「事件の概要」と「判決の要旨」だけで解ける問題も少なくありません。
この2つを知っておくだけで充分正解に至ることは可能ですし、また短期合格を目指すならば、この2点だけを学習すべきでしょう。この点からも判例百選を使った学習はオーバースペックなのです。